恋人の聖地 宇多津町 平成相聞歌

過去の結果

第11回(平成29年度)結果発表

≪第11回(平成29年度)テーマ≫

最優秀賞

片恋のピアス海色春疾風

クラウド坂上

選評

・片恋、ピアス、海色、春疾風と名詞ばかりをならべ、片言めいています。が、このスピード感から清新な片恋の思いが伝わり、若々しい作品。(田中)

・リズム感があり、片恋、ピアス、海色、春疾風という言葉の取り合わせが抜群によい。「春疾風」が効いている。(水野)

・「片恋のピアス」は身につけているものでしょうか。それともずっと渡せずに持っているものでしょうか。爽やかな「海色」は清浄さと同時に寂しさも思わせます。ひょっとしたら片恋の相手は様々な事情から想いを告げられない相手なのかもしれません。強い春風が海の匂いを運んで作者に吹き寄せます。その先には幸せな未来が待っているでしょうか。切なくも美しい春の一瞬。(家藤)

最優秀賞イラスト

平成29年度の最優秀賞「片恋のピアス海色春疾風」を元に、三木 桃香さんが香川短期大学在学中にイラストを作成しました。

※画像をクリックすると、大きな画像でご覧いただけます。

優秀賞

天高し手紙のように渡すガム

うみね

選評

・「天高し」と初句に常套的な季語を出しながら、二句以下は肩透かしをくったような軽やかさ。ミントの香る、爽やかな恋のはじまりでしょうか。(田中)

・さりげなく恋人に手渡すガムを手紙のようだとの表現。恋人関係のすがすがしさが、「天高し」とマッチしている。(水野)

・ガムを渡すような相手ならそれなりに気心が知れているでしょうか。でもそこまで親密なわけでもない。何気なくガムを差し出す、その行為は相手ともっと近しく繋がっていたいということ。秋の空は高く澄んで二人を見守ります。(家藤)

瀬戸の海の 寄せては返す 白浪に 浮かぶは恋ひし 君の面影

村上なつめ

選評

・波しずかな瀬戸の海を見ての感慨。海は、遥かな日々を、また恋しい人を想い出させてくれます。調べのよい、共感を呼ぶ歌です。(田中)

・穏やかな波の満ち引きが、優しい作者の人柄を感じさせ、ほっこりした気持ちにさせる作品です。(水野)

・海を見て恋人を想う。それは古代の時代から人が繰り返してきた営みでもあるのでしょう。「面影」の一語は亡くなった「君」の存在も想像させます。「白浪」にいっそう寂しさが募ります。(家藤)

毒りんごのような君の指に触れ じわじわ恋を腐らせていく

鈴屋

選評

・「謎のある歌がいいよね」・・・・・岡井隆氏の言葉です。この歌の下句には謎があります。はてさて、恋の成り行きは・・・・・(田中)

・独特の感覚を持った賛否両論のある歌。口語体で、現代詩といってもいい。新しい方向性を感じます。(水野)

・強い魅力を感じるか、「さっぱりわからん!」と離れていくか、読み手によって大きく評価の分かれる作品です。独特の比喩、そして「腐らせていく」という感覚。個人的には若い女性の恋を想像しました。初めての恋。確たる自分が侵食され徐々に正気を失っていく感覚。その状況を客観的に認識している自分もいるかのようで。(家藤)

特別賞

一つずつ 恋のボタンを はめて行く 買ったばかりの 白いYシャツ

酒井具視

選評

・「恋のボタンをはめて行く」に作者の表現の発見があります。新しい白いYシャツが清々しい。(田中)

・手なれた実力のある作風が、「恋のボタンを一つずつはめて行く」に表現され、真っ白なYシャツにどきどきします。(水野)

・「一つずつ」とめる時間にときめきが高まります。新しい「Yシャツ」の白も眩しく、爽やか。(家藤)

幼き日 君がねだった プレゼント シロツメクサの 婚約指輪

瑞香

選評

・大きくなったら結婚しようね、の声が聞こえそうな歌。淡彩の絵本を見るようです。ちなみにクローバー(シャムロック)は、アイルランドの国花。

・シロツメクサはクローバーのこと。幼い日の思い出がシロツメグサの指輪の具体性で現在につながっています。(水野)

・子どもの頃の微笑ましい約束。「婚約指輪」が最後に登場する語順も効果的。緑と白の指輪は鮮明に記憶に焼き付きます。(家藤)

恋すれば 何曜日でも プレミアム

汐海 岬

選評

・プレミアムフライデーは、いつもとは違う豊かさを楽しむという日。恋をすれば、毎日が特別な日。まさに恋は魔法ですね。(田中)

・プレミアムフライデーなどと国に決められることなく、恋は自由に、個人的にプレミアムなのですね(水野)

・時事にあやかった2017年ならではの作品。繰り出す夜もキラキラしていそうです。(家藤)

寄り添って あなたの呼吸も 見える冬

松田 良弘

選評

・寄り添っていると、呼吸が聞こえるというのが普通ですが、「呼吸も見える」と表現する。見えるのは「心」ですね。(田中)

・吐く息の白さが分かるほど寄り添った恋を、「あなたの呼吸も見える」と表現したところに個性があります。(水野)

・俳句の世界には「息白し」という季語もありますが、恋の要素も入ればこんな感じでしょうか。寄り添う体温が暖かい。(家藤)

来るな終電 止まって時間 湧くな寂しさ 笑って私

山月恍

選評

・別れの寂しさを、強い口調で「来るな 止まって 湧くな」と詠いながらも、自己コントロールした笑顔で結ぶ。作者像が見えるような作品。(田中)

・体言止めや命令形のリフレインが、とても効果的で生き生きしています。(水野)

・命令形+名詞を繰り返す手法はショートフィルムのようで印象的な作品でした。後半、「寂しさ」のイメージから一転「笑って」という語が登場する展開が鮮やかです。(家藤)

履き慣れぬヒールで痛めた小指まで ハミングしてるデートの余韻

ほたる草

選評

・お洒落をし、普段はかないヒールの靴で出かけたデートは、とても楽しかったのでしょう。痛めた小指がハミングしているのですから。(田中)

・細かく具体的な描写が、無駄がなくドラマチックです。「余韻」に恋の展開を想像します。(水野)

・ずきずきとした痛みを「ハミング」へと置き換えられる、その心情がまさに恋! 充実感と幸福と、次回への期待と共に解放してやる足が心地良い。(家藤)

好きなもの 本と葡萄と ひつじ雲 線香花火と あなたの笑顔

まっちゃん

選評

・名詞を五つならべて、物語を作っています。「好き」を導き出すために、本と葡萄とひつじ雲、線香花火を羅列して巧みです。(田中)

・好きなものを羅列した事が、言葉の力を感じさせ、イマジネーションをひろげて、懐かしい感傷で満たされます。(水野)

・「好きなもの」を次々と並べることで作者の人となりが見えてきます。穏やかで満ち足りた二人の生活がじんわりと幸せ。(家藤)

亡き母の文箱にひそむ文ひとつ 武骨な父の筆文字踊る

上村ひろし

選評

・一読してイメージのたつ、調べのよい作品。「筆文字踊る」がこの歌のポイント。恋に浮き浮きしている若き日の父上の様子が伺えます。(田中)

・亡き母・文箱・無骨な父・筆文字という材料がそろえば、古きよき時代のロマンスのひとこまです。(水野)

・時を経て知る両親の恋の軌跡。父の思わぬ一面と、それを愛した母の過去へ想像は広がります。(家藤)

ジーンズの穴から恋が顔を出す

浜ぶどう

選評

・「恋が顔を出す」は、作者独自の表現。意外性があって、そこが楽しい。(田中)

・ジーンズの穴は、いまどきのファッション。恋に落ちる一瞬を切り取って鮮やかです。(水野)

・破れたジーンズから顔を出しているのは眩しい膝小僧でしょうか。想い人の健康的な魅力に高鳴る胸。(家藤)

きみのシャツ またはみ出てる 5時間目

朝山ひでこ

選評

・いつも彼のことが気になりますね。いつも彼を見ている・・・・・ここから恋が始まるのでしょう。(田中)

・授業中の観察・描写、「5時間目」という設定の的確さ。「また」という言葉に恋心がにじみ出ています。(水野)

・「またはみ出てる」ことに気づくのは常に見ているから。学生の恋の視線を思わせます。シャツに焦点を絞った語りで映像が見える。「5時間目」という時間情報も実感がありますね。(家藤)

四国新聞社賞

恋人の聖地へ続くこの道はあなたと寄り添う愛の小径

HANA

恋は雪 握りしめたら 消えちゃうの だからそっとね そっと触れるの

さびしんぼう

レモン水飲み干す君が去った夏

高橋真織

さよならの珈琲冷めて風は秋

香野さとみ

かき氷あの子の秘密をかみ砕く

ササミ

香川短期大学賞

蜂蜜とホットケーキとコーヒーときみの笑顔で満たす休日

えむ

来世も貴方に出逢いたい。 前世もきっとそう願ってた。

妃 妙

恋した日 初めて嫉妬を 覚えた日

森崎重夫

君の使う カップに描いた ラテアート 可愛いクマに 『好き』の吹き出し

愛宕平九郎

桜舞う 季節に君に 恋をして 雪が舞う 季節に心 一つに結ぶ

酒井具視

選考委員について

平成相聞歌の選考委員の先生を紹介させていただきます。(50音順 敬称略)

  • 家藤 正人(俳人)
  • 田中 美智子(歌人)
  • 水野 ひかる(詩人)
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